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溺水について

溺水について

【子どもは静かに溺れます】

教えて!ドクタープロジェクトでは、「乳幼児は静かに溺れます」と題して主に入浴時の乳幼児の溺水事故を防止するために、乳幼児が溺れるときは暴れたり大声を出したりすることなく、静かにお湯(水)に沈むのだということを広く知っていただくために啓発を行ってきました。
入浴時やプールでの水遊びの時に大切なお子様を溺れさせないために、イラストを作成してSNSに投稿したところ実にたくさんの方からの同様の経験をしたという反応が寄せられました。

2017年の9月に最初の投稿をしたときは、月間で770万件ものインプレッション(Twitterにおけるツイートインプレッション:何人の人にこの投稿が読まれたか)が、また、2018年2月に2回目の投稿をしたときはたった10日で530万件のインプレッションがあり、お風呂で子供が、またはご自身が幼いときにまったく同じように静かに溺れたという経験を寄せてくださった方がかなりの数に達し、また一方では、「まったく知らなかった」という声も多く聞かれました。

溺水事故防止のためにこの啓発はとても意味があることだと実感をし、さらに知っていただくために「乳幼児が溺れるときは静か」という現象についてイラスト中の言葉を使って詳しくまとめてみました。

【本能的溺水反応について】

「本能的溺水反応」という言葉は、Frank Pia博士という方が最初に提唱しました。
博士はライフガードとして1960-70年代に仕事をしていたときに、溺れる者が救助するまでの過程をビデオに収め、観察した結果、溺れる者は皆、助けを呼んだり叫んだりしないということに気づき、これを本能的溺水反応と呼びました。

私たちは映画やドラマ、マンガなどの溺れるシーンで、人が溺れるときには手足をバタバタさせて助けを大声で呼ぶものと先入観をもたされていますが、足のつかない水に入ったり鼻に水が入ったりして恐怖を覚えて溺れそうになり必死になることはあっても、実際に溺れるときには人はこのようになります。
博士によると、溺れる人は水面に残ることに精一杯で、

  • 呼吸をすることに精一杯で、声を出したりすることができず
  • 手や腕を振って助けを求める余裕がなく
  • 上下垂直に直立し
  • 助けが確認できない状況では足は動かない、

と言います。
さらに、子どものほとんどは「何が起きているのかわからないだろう」といい、これらを本能的溺水反応と名付けました。

この現象は米国の沿岸警備隊(United States Coast Guards)の間では常識のようで、Frank博士もこの警備隊の雑誌(On Scene)でこの現象について説明されています。
したがって、子どもだけに当てはまる現象ではなく、大人でも同じだということです。
ただ、特にこどもは自分に何が起きているかわからず、また沈む速度も速いため、特に「静かに早く溺れる」ようです。

参照文献

米国Seattle Childrens’ Hospitalの小児科医、W・S・スワンソン医師の啓発
http://seattlemamadoc.seattlechildrens.org/drowning-quieter-faster-closer-than-you-think/

米国陸軍のHP
https://www.army.mil/article/109852/drowning_doesnt_look_like_drowning

米国沿岸警備隊で組まれたPia博士と、水難救助専門家であるMario Vittone氏の対談のまとめ
http://wildriver.co.uk/course%20info/Drowning%20reflex%20article.pdf

【不慮の事故で多い割合を占める「溺水」】

このプロジェクトでは子どもたちの健康を守るために、医学的に正しい情報を啓発することを心掛けていますが、この現象は「医学的に正しいか」厳密に証明できていません。
それは、この現象が医療界では注目されてこなかったためだと考えています。注目されなかった理由は、医療機関には溺水で意識がなくなった状況でなければ搬送されないからではないかと考えています。当然溺れた瞬間を見ていれば助けますので、搬送されるケース(=病院が溺水症例として把握するケース)では、どのように溺れたのか、という情報が得られません。当然「人を溺れさせて、実際の様子を観察」する実験も倫理的には許されません。

ですが、溺れる瞬間を目撃して記録を残した前述の70年代のPia博士の論文や、多くの事例で、溺れるときは静かに沈んでいくことが分かっています。ただ、目撃した方の多くは「たまたま静かだったのだろう。溺れる時は騒ぐはずだ」という先入観があるためにこれまでこの現象は注目されなかったのだと思われます。
米国の多くの水難救助関係者が常識としており、またライフセーバーは「溺れるときは静か」と教わっています。この啓発の結果導き出される結論が「乳幼児の入浴時には目を離さない」というものであり、医学文献は乏しくても、予防という観点からは医療者が啓発する意義は大きいと考えました。

本能的溺水反応のひとつが、「呼吸をするのに精いっぱいで声を出せない」という現象です。
真に溺れる時は、声は出せませんので、それは水深の浅い場所でも当てはまると言えます。
SNSの投稿に寄せられた体験談にも、足のつく浴槽内で立たせていたところ足を滑らせて仰向けに沈んでいた、というものが多く見受けられました。また、プロジェクトメンバーの中にも、保護者としてまったく同じ経験をしているものが複数います。

日本では浴槽文化でもあり、入浴時の溺水が多いといわれています。
温かいお湯では冷たい水よりも死亡・後遺症を残すリスクが30倍である点、水中での時間が5分を超えると脳に後遺症を残しやすいといわれており、時間勝負である点などを考慮すると、子どもの入浴時に、「子どもが溺れる時は静かである」と知っておくことで助けられるケースもあるのではないかと考えています。

そもそも浴槽に立たせておく状態のときに洗髪などで目を離さなければいけない行為をしない、ということがありますが現代の日本の子育て事情では保護者ひとりで乳幼児を入浴させなければいけない(しかもお子様が複数のときもあり)場面が多く、どうしてもこのようなことが起こりがちです。

【溺れたらどうしたらよいか】

これまでは、溺れたらまず溺れた人の背中側から抱きかかえ、両腕でお腹に手をまわして圧迫する(水を吐かせる)処置をすべきと言われたこともありましたが、これはあくまで固形物に対する処置であり、液体に対しては効果がなく、むしろ誤嚥を誘発するため危険で、一番のマイナスは心肺蘇生が遅れることとされていて、今は推奨されていません。

もし乳幼児が溺れてしまったらとにかく一刻も早く水・お湯から引きあげて

  1. 平らな場所に寝かせて、
  2. 意識があるかを確認し
  3. 意識がなければ人を呼んだうえで(救急車連絡なども)
  4. 絶え間なく心臓マッサージと人工呼吸を行ってください。
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